アポロニア21

Vol.18「放っておくと大変なことに」の科学的根拠

都内に、他の歯科医院で受けた診断が正しいかどうか、改めて検査、診断する「セカンドオピニオン」の機能を持つ歯科医院があります。そこには、毎日、「通っている歯科医院で○○と言われたのだが」という相談が持ち込まれますが、最近、目立ってきたのが、「放っておくと大変なことになる」という脅しのようなアドバイスを受けてしまっている患者さんの増加です。

矯正とインプラントの部分で、特に目立つようで、「このままの歯列で放置すると病気になる」「抜けたまま放置すると顎関節症になる」などと言われたことのある患者さんが急増しているようです。実際には、これらのアドバイスには、確たる科学的根拠がありません。

歯科医療は、一般の医療に比べて患者さんが自分の意志で治療内容を選択できる範囲が非常に広いのが特徴です。その中には、当然、「そのまま放置する」という選択肢もありえます。放置すると、見た目が悪くなるなどのデメリットはありますが、がんなどと違い、「放置すると大変なことになる」というような全身の進行性の病気と結びつく根拠は明らかではないのです。

もちろん、噛み合わせの問題が出てくる可能性もありますが、それは何らかの治療の後でも、発生することもありえます。「治療しなければ○○になる」「治療すれば治る」ということを確定的に言える段階にはないというのが現状です。

今後、歯科治療と全身疾患との関係について、より多くの学術的見解が示される可能性はありますが、現時点では、それらの関係については、まだまだ検証が十分でないとされています。

「放っておくと大変なことになる」式の脅しを受けた患者さんの中には、歯科医院で推奨される矯正、インプラントをしないと、重大な病気、障害に結びつくと考えるようになり、ある種の脅迫観念を持つようになる人も少なくありません。このような脅しを行う歯科医院が提示する治療が、いずれも保険適用外の内容に偏っているところも不可解です。

それほど重大な結果に結びつくものであれば、政府が保険診療の範囲に入れてしかるべきだからです。しかし、そのようにはなっていません。このような根拠薄弱な脅しは、歯科医療の最大の特徴である「患者さんによる選択幅の広さ」を損なうものです。冷静に自分の身体を見つめ直すためにも、歯科治療の選択の際には、できるだけセカンドオピニオンを取るように心掛けたいものです。


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