アポロニア21

Vol.31 禁煙の歴史と意義を考える

多くの歯科医療現場では、患者さんに禁煙を訴えています。喫煙は、歯周病や口腔がんなどの原因となり、歯科治療の予後にも悪い影響が出るからです。  特に、インプラントを希望する患者さんには、必ず禁煙していただくことが求められます。喫煙によって歯肉の状態が悪くなれば、インプラント体を維持する組織は長持ちしないとする歯科医師が大半です。  最近、世界中で、喫煙に対する風当たりは非常に強くなっています。政府の中に、「たばこ税増税」を支持する意見が多いのも、その流れかもしれません。  

さて、あまり知られていないことですが、20世紀の世界で最も大規模に禁煙運動を展開したのは、ドイツのナチス党です。ナチス党は、「国民の健康増進」を大きな政策の柱と位置づけており、さまざまなスポーツを奨励したりしましたが、人々の日常生活に最大の影響を与えたのが禁煙運動でした。現在でも、ナチス党が発行した喫煙の害に関するパンフレットや、禁煙を呼びかけるポスターなどが文化遺産として残されています。  これらの政策について、歴史家の間では、「人々の嗜好に対して政治が口を挟むおせっかいな介入」であるとして批判的な見方が多いのですが、これには、ナチス党なりの理由もあったようです。  当時、社会保障政策が充実していたのは、いわゆる自由主義世界よりも、ナチスドイツを初めとした独裁国家群でした。日本も、全体主義的な政策が目立つようになってくる時期、戦後に整備された一連の社会保障制度の「種」のようなものが次々に生まれています。人々の健康に政府が責任を持つ社会システムのもとでは、「健康な生活を営みなさい」と政府が口を出さなければ、政府の支出が過大になってしまいます。そのため、どうしても「おせっかいな政府」になったものと見ることもできます。  

歯科医療の話に戻すと、現在、アメリカを中心に、かみタバコを原因とする口腔がんが大きな社会問題となっています。これらの口腔がんを早期発見する責任は歯科医師にある、と見なされており(アメリカで、口腔がんを見落とした歯科医師が裁判で負けたケースもある)、口腔がんの検査キットが歯科医師の間で急速に普及しているようです。  イギリスでは、喫煙者の数が減ったことから、口腔がんの主要原因が喫煙から過度の飲酒に変わりつつあるとされていますが、最もハイリスクなのは「酒を飲みながらタバコを吸う」という習慣を持っている人だそうです。一度、生活習慣を見直してみたらいかがでしょうか。


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