アポロニア21

Vol.41 歯科は「先祖返り」を始めている

 このたび、『18世紀イギリスのデンティスト』という自著を出版しました。この本をまとめていくなかで、「歯科医師」の英訳として用いられている「デン ティスト」というものが、通常の医療者とはかけ離れた存在であったことがわかりました。現在でも、その性格は連綿として欧米の歯科医療従事者に受け継がれ ている可能性があります。

 まず、歯とその周囲組織を治療することよりも抜歯、入れ歯という流れを選択する傾向が強いということです。一方、通常の医療者ではどうでしょうか。肝臓 が悪くなれば、それを治療しようとしますし、目や鼻でもそうです。「悪くなったら取って、人工物に置き換えよう」と発想することは極めて特殊なことなので す。現在でも、早めに抜歯してインプラントにした方が良いと患者さんに勧める歯科医師がいますが、このような行動は、通常の医療者ではありえないものだと 言えるでしょう。

 しばしば、私も「むし歯や歯周病など歯科疾患は一定以上進行すると治らない」と情報発信していますが、一方で、歯科医療者がこれらを治療する努力を怠ってきた事実もあるのかもしれません。

 次に、いわゆる「審美目的」の治療というものが診療の主軸をなしていることです。前歯の修復に白い材料が保険診療でも認められていますし、街には「ホワ イトニングやります」という歯科医院が多数見られます。ホワイトニングは、オシャレな新しい歯科医療文化などではなく、日本では赤穂浪士討ち入りなどが起 こっていた頃、イギリスにおけるデンティストの主要な業務だったのです。当時の新聞を見ると、特に女性のデンティストがこの種の技術に長けていたようで、 「雪花石膏のように白くなる」「破壊された歯でも真っ白にする」といった宣伝が多数出されていました。

 18世紀前半までのイギリスでは、「歯の病気」は、とりわけ小児にとって死に至る病を起こす危険な部位でした。それが、なぜか軽症化していって、その代 わりに砂糖消費が広がり、むし歯が蔓延するとともにデンティストも隆盛を誇るようになります。彼らの仕事は、歯をキレイにすること、そして、むし歯など病 気になったら、これを治すのではなく抜いて人工物に置き換えることでした。

 現在、むし歯が減少していく中で、歯周病が注目されるようになり、やはり、それを治すのではなく「抜いてインプラントに」という歯科医師が国際的に増加しています。いわば、「先祖返り」しているのかもしれません。


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