アポロニア21

Vol.19歯科医師の認定医、専門医の意味―自称「上手い」の可能性も

日本の歯科医師の間で、さまざまな学会、団体から「○○認定医」「△△専門医」という称号を受けることが、一種のブームになっています。公式に認められた大規模な学会だけでなく、ちょっとした歯科医師のグループや、歯科医療器材メーカーの認定証のようなものまで、数多くの認定証を待合室やカウンセリングルームにところ狭しと貼ったり、HPにさまざまな肩書きを掲載する歯科医師が増えています。

この背景には、それらの認定を受けることで、患者さんから選ばれる歯科医師になりたいという考えがあるようです。実際、患者さんが歯科医院選びをする際、ある程度、参考にはされている側面があるようで、例えば、一部マスコミが「日本の名医―歯科版」といった出版物を作る場合には、何を基準に選んで良いか分からないため、これらの認定医、専門医の中から抽出することが多いとされています。

しかし、これらの認定の中には、ただその団体に一定期間在籍して、所定の認定料(これが結構な金額になることもある)を払うだけで、立派な認定証を発行してしまうという実態のアヤフヤなケースも少なくありません。このような甘い認定システムは、歯科医師の間でも批判を受けていますから、症例発表などを義務付けるところも増えていますが、実際には、認定医、専門医と称する中には、自称「上手い」歯科医師に対してお墨付きを与えているだけ、というものも少なくありません。

これらの認定医制度の社会的メリットは、歯科医師にやる気を与える側面があるということです。それなりに実態のある学会のものであれば、認定審査を受けるのに一定の研鑽が必要なため、それに向って歯科医師が努力するからです。病院のような組織の中でキャリアを積むことが多い医師に比べ、歯科医師は第三者から評価される機会が不足していますから、このような認定制度に大きな意味があるのです。しかし、「○○認定医」「△△専門医」というもののには、実態を伴わないものもあるのだと認識しておく必要があるかもしれません。


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